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Vol.188 初任給引き上げと企業内バランスの難題
「初任給引き上げと企業内バランスの難題」 代表取締役 福山 研一
つい先日、”警視庁の大卒初任給30万円超に引き上げ”というニュースもありましたが、近年、多くの企業が新卒の初任給を引き上げて話題になっています。
背景には、労働力不足、インフレ対応、優秀な若手人材の確保といった要因が挙げられます。
特に大企業では、従来20万円台前半だった初任給が30万円を超える例もあり、中小企業や地方企業にもその波が広がりつつあります。
新卒採用市場の活性化という点では喜ばしい動きですが、一方で、就職氷河期世代や既存社員の給与とのバランスに関する懸念が浮上しています。
例えば、数年間働いている社員の給与が月25万円程度のまま、新卒の初任給がそれに近づいたり、場合によっては追い越したりするケースも考えられます。
そうならないよう、全社員の給与を同じだけ引き上げる方法もありますが、これは企業にとって財務的な負担が大きく、すぐに実施するのは難しい場合が多いと思われます。
より現実的には、初任給との逆転や同水準になる恐れのある若手世代に対して、上げ幅を逓減させながら、新卒社員を上回るように調整を図る方法が多いようです。
ただ、私も該当しますが、入社時にも大いに苦労した就職氷河期世代は、40代後半から50代前半に差し掛かっており、初任給引き上げに伴う調整には無関係なことが多いことも課題です。
こうした世代から、今の新卒世代をうらやむ声や、なかには恨み節まで、ネットニュースなどでも散見されます。
新卒採用に注力するあまり、働き盛りの中堅層やベテラン世代のモチベーションを下げてしまって、離職・転職を促してしまっては元も子もありません。
また、新卒社員のその後の昇給幅も低くなることが考えられ、数年で転職という恐れも生じます。
このバランスの難題に対して、他に考えられる方策としては、給与以外の形での待遇改善を図る企業もあるようです。
例えば、スキルアップのための研修制度を充実させ、能力に応じた昇給ができる環境を整える。また、リモートワークやフレックスタイム制の導入、福利厚生の充実といった施策によって、給与以外の面で既存社員の満足度を高める方法も考えられます。
このテーマについては、企業毎に事情も異なり難しいものですが、逆に対策の打ち方によって採用強化に繋げるチャンスにもなるかと思います。
今後も全国の成功事例などウォッチして、有効なものは共有していきたいと思います。